家康公と輪王寺―東照大権現の仏教祭祀
ごあいさつ
「一周忌をすぎた後,日光山に小さき堂を建て勧請せよ。八州の鎮守となろう」。家康公の御遺言により東照大権現は久能山(静岡県)から日光に勧請され,長きにわたる日光山と徳川家の関係が始まりました。
日光の壮麗な寺社建築を整えたのは三代将軍の徳川家光公です。とりわけ寛永13年(1636)に催された家康公の二十一回忌に際して多くの堂社を建て替え,大々的な法要を営みました。以後,百年ごとの大遠忌も日光で挙行されますが,全国から多くの僧侶が集い,東照大権現の本地仏の薬師如来を祀り,経典を読誦する仏式の法要が営まれたのです。
仏教に深い関心を寄せた家康公は天台宗の論議をはじめ,真言宗や浄土宗の僧侶から百数十回にも及び仏教の教説を聴聞したといいます。東照大権現の祭祀に力を尽くした天海大僧正との縁も論議がきっかけでした。
長く家康公の祭祀を担うことになった日光には家康公の仏教祭祀に関わる宝物が数多く残されています。日光が紅葉の彩りに輝きを増す秋のひととき,家康公のために残された仏教の美術,宝物をご覧頂ければ何よりの幸いです。
令和 5年9月 輪王寺宝物殿
【主な展示品】☆国宝 ◎重要文化財 (初)初公開
◎紙本着色 東照権現像_束帯像 1幅 寛永19年(1642)
◎東照権現祝詞_伝春日局 1合 江戸初期
東照宮御縁起 巻2 関ヶ原の段 1巻 文化11年(1814)
(初)慈眼堂 法華経十軸 1揃 延宝3年(1675) 期間限定公開
慈眼大師筆 日光三社神号 1柄 江戸初期
漆黒地蛤柄文蒔絵鼓胴 1点 江戸
☆大般涅槃経集解 巻51 1巻 奈良
次回展示予告 2023年11月30日(木)~ 2024年 1月23日(火)
新しい春を迎える―輪王寺のお正月