山に坐(ましま)す仏と神々―山岳信仰の遺宝ー
ごあいさつ
身近な里の向こうに遠くそびえ立つ山々は神や仏の坐す,異界や常世につながる場所として古くから信仰されてきました。
日光は補陀落山(ふだらくさん)(男体山)への登頂を目指した勝道上人によって天平神護2年(766)に開山されました。大谷川を渡った今の山内地区を拠点に修行を重ね,天応2年(782),三度目にして山頂を極め,眼下に湖水を見いだしたと伝わります。これが中禅寺湖です。
男体山・女峰山・太郎山の三山を御神体とし,それぞれの本地仏を千手観音・阿弥陀如来・馬頭観音とする日光三所権現の信仰がやがて確立します。
山岳を信仰のよりどころとし,山に入って修行を積む山岳信仰は日本列島に広く見られます。日光では,三峰五禅頂(さんぶごぜんじょう)に代表される山を舞台とした修行だけではなく中禅寺湖の各所に配された霊場を巡る禅頂(船禅頂(ふなぜんじょう))に特徴があります。いずれも勝道上人による日光開山を追体験する行事です。
今回は,輪王寺に伝わる山岳信仰の遺宝と特殊な密教関連品を中心に展示いたしました。日光の原点たる山と湖をめぐる歴史と信仰にひととき心を向けて頂ければ幸いです。
令和 5年8月
輪王寺宝物殿
【主な展示品】 ☆国宝 ◎重要文化財
☆大般涅槃経集解 第49巻 1巻 平安時代
◎鋳銅半肉千手観音像 1面 平安時代
木造大威徳明王坐像 1躯 平安時代
阿弥陀如来鏡像 2面 平安時代
金光明最勝明王経 貞禅書写 1巻 明徳5年(1562)
東照宮・大猷院・慈眼大師御影額 1面 慶安5年(1652)
次回展示予告 2023年 9月28日(木)~ 2023年11月28日(火)
家康公と輪王寺