日光山の儀礼と音楽
ごあいさつ
神様や仏様に対して読経、雅楽・能・田楽などの音楽、和歌や連歌を奉納し、その心を楽しませる行為を法楽と呼びます。神様や仏様は法楽を受けることで力を得ます。法楽の会場となった寺社や霊場では、奉納を受ける神様・仏様だけでなく、演者や観衆が一堂に会し、芸能を享受することで、一体感を得るのです。
仏教の儀礼の中にも音があります。読経の声や木魚や鈴の音色は法事などで耳にする機会があることでしょう。また特別な法会で雅楽などの芸能を奉納する寺院もあります。音は儀礼会場の宗教的な雰囲気を高め、神様や仏様を楽しませる役割を持っているのです。そのため寺院には、楽器などの音に関する資料が残されています。
日光山にも、儀礼で使用された音楽や芸能の資料が数多く伝来しています。特に毎年5月に輪王寺で開催される延年の舞は、鎌倉・室町時代には各地で盛んに行われていましたが、現在では岩手県の平泉毛越寺など一部の寺社でしか行われていない貴重な芸能です。また江戸時代に東照大権現をお祀りする日光東照宮や3代将軍徳川家光公の宗廟大猷院が創建されると、その祭礼や行事で雅楽が奏されるようになります。そこで今回の展示では、延年をはじめとする音楽や儀礼に関わる輪王寺所蔵資料を通じて、中世から近世にかけての日光山の音楽と儀礼をご紹介します。音や演技を奉納することが神様や仏様への祈りとなるという人々の感覚を知る機会となれば、幸いに存じます。
令和 5年6月
輪王寺宝物殿
【主な展示品】 ☆国宝 ◎重要文化財
☆大般涅槃経集解 第48巻 1巻 平安時代
◎鋳銅半肉千手観音像 1面 平安
◎銅磬 1面 建保5年(1217)
◎舞楽道具 還城楽の木蛇 1点 寛永13年(1636)
朝鮮通信使奉納 敔(ぎょ) 1基 明暦元年(1655)
烏天狗 1面 天和2年(1682)
びんざさら 1点
東照宮御縁起 巻第2(大坂の陣) 1巻 文化11年(1814)