聖地 中禅寺と滝尾
ごあいさつ
今では風光明媚な避暑地として有名な中禅寺湖は、神護景雲元年(767)に仏道修行のため,四本龍寺から男体山の登頂を目指していた日光山の開祖勝道上人によって発見されました。延暦3年(784)には、勝道上人は立木千手観音を本尊とする中禅寺を建立し、中禅寺湖周辺の活動拠点としました。やがて中禅寺は勝道上人ゆかりの聖地として京都の公家にも知られるようになります。その背景には、勝道上人と後継者たちの活動がありました。
日光山の伝説では、弘法大師空海が弘仁11年(820)に女峰山のふもとに滝尾権現をお祀りし(現在の滝尾神社)、勝道上人の弟子道珍が初代上人になったといわれています。勝道上人を祖とする山岳信仰集団にとって、滝尾の地は中禅寺と並ぶ活動拠点であり、もう1つの聖地だったのです。
このように日光山には東照宮設置以前から複数の信仰拠点が存在し、それを土台に東照宮が創り出され、近世を通じて関係を維持していたのです。今回は中禅寺と滝尾から輪王寺に伝わった什宝を展示いたしました。展示を通して,ありし日の中禅寺と滝尾という2つの聖地の姿を想像していただければ幸いです。
令和 4年8月
【主な展示品】 ☆国宝 ◎重要文化財 ○栃木県指定文化財
☆大般涅槃経集解 第43巻 1巻 平安時代
◎金銅大火舎香炉 1合 鎌倉時代
◎日光山滝尾建立草創日記 1巻 鎌倉時代
○銅錫杖頭 1柄 正応元年(1288)
〇木造三世明王・軍荼利明王 2軀 平安時代
〇古能面 女 1面 室町時代
〇古能面 獅子口 1面 元和3年(1617)