日光山開創と徳川家
ごあいさつ
日光山の長い歴史は遠く奈良時代後期の天平神護2年(766)に始まります。下野国東部に生まれた勝道上人は,遠く仰ぎ見る男体山に登ることを志します。深山に分け入り,深沙大王の助けによって示現した蛇橋(神橋)によって大谷川の激流を渡り,紫雲が立つ霊地に小さな庵を結びました。それが日光山の始まりです。
大同2年(807),勝道上人は国司の依頼により干ばつに苦しむ下野国のために祈祷を行い,請雨に成功。令名は中央に知れ渡り,上人の没後,空海によって上人の事績をたたえる文章が草されました。
そうして勝道上人の後に続く修行者が続々と日光に集まるようになりました。これによって,男体(千手観音)・女峰(阿弥陀如来)・太郎(馬頭観音)を柱とする日光三所権現に加え,多様な信仰が日光に入り,中世には天台・真言両宗兼学の道場として多くの学僧が集まるところとなり,江戸時代には徳川家康公をご神体とする東照宮をお迎えしました。
関東随一の山岳信仰の霊場として,また徳川家康公・家光公をお祀りする徳川家の聖地として日光は発展します。勝道上人と山岳信仰,そして徳川家ゆかりの宝物によって,長い歴史の蓄積を感じていただければ幸甚です。
【主な展示品】 ☆国宝 ◎重要文化財
☆大般涅槃経集解 第36巻 1巻 平安時代
◎鋳銅半肉千手観音像 1面 平安時代
勝道菩薩真容 1幅 慶応2年(1866)
伝勝道上人使用錫杖(複製) 1柄 ※原品は奈良時代
地蔵尊像 1幅 嘉永5年(1852)
相輪樘龍車納入物 9点 明治8年(1875)
◎瑞花孔雀経 1面 鎌倉時代
狩野安信筆 滝見観音画像 1幅 承応元年(1652)
東照大権現像(複製)1幅 ※原品は寛永16年(1639
公益財団法人德川記念財団常設展示
*日光山輪王寺宝物殿は德川記念財団の特別協力館です。
徳川に伝わる書と文房具
ご 挨 拶
書は、文字を書くこと、または書かれた文字を鑑賞対象として捉える一つの造形芸術です。それは、文字を筆記という手段としてではなく、美的価値あるものとして追及した、いわば実用性から芸術性へと発展させたものといえるでしょう。しかし例外的に、実用的書写である書状や写経もまた、歴史的な価値がある場合、書として鑑賞の対象とされてきました。
このように美的鑑賞の対象となったのは、「書かれたもの」だけではありません。「書くための道具」である文房具もまた、古くから賞翫されてきました。その営みは中国漢代に端を発し、宋代になって大きく発展したとされます。日本では室町時代には書院と呼ばれる空間に文房具の飾り付けが行われるようになり、江戸時代に至るとこの文化は室礼の形式の一つとして定着しました。こうして生活空間に飾る美術品としての受容が高まる中で、文房具はより工芸的な側面を持ち、美的価値を強めていったのです。
本展示では、5代将軍綱吉が大聖寺宛に発給した公文書である「徳川綱吉朱印状」や、6代将軍家宣が父である綱重の霊廟完成を記念して書写した「仏説阿弥陀経」など徳川将軍にまつわる書と、金蒔絵によって意匠をあらわした「梨子地千鳥蒔絵硯箱」をはじめとした徳川宗家に伝来した文房具をご紹介いたします。
令和3年6月
公益財団法人 德川記念財団
《常設展案内》
●日光山輪王寺宝物殿(次回)
令和3年 8月 6日(金)~10月 6日(水)「能楽とデザイン」
●久能山東照宮博物館
令和3年 6月12日(土)~ 8月 5日(木)「花鳥を愛でる」(久能山東照宮企画展への出品協力)
〒422-8011 静岡市駿河区根古屋390 TEL054-237-2437
久能山東照宮ホームページ http://www.toshogu.or.jp
【交通機関】東名静岡または清水I.Cより日本平まで約20分
JR静岡駅よりしずてつバス「日本平行き」
【駐車場】 日本平に無料駐車場200台
〔日本平〕よりロープウェイにて5分
展示内容・展示期間は、予告なく変更する場合があります。
公益財団法人 德 川 記 念 財 団
〒151-0065 東京都渋谷区大山町37-6 TEL03-5790-1110・2620
ホームページ http://www.tokugawa.ne.jp