宮様の日光山―輪王寺宮の時代
ごあいさつ
「輪王寺」の名称は,江戸時代に日光山全体を統括すると同時に,比叡山の天台座主,上野寛永寺を兼務したに由来します。輪王寺宮が日光で過ごされた場所がこの宝物殿と逍遥園があるこの一帯なのです。この度は,日光山輪王寺に今も残る輪王寺宮ゆかりの宝物を展示いたします。
日光山は豊臣秀吉によって所領を没収され,一時的に衰亡していました。それを復興したのが天海大僧正です。天海大僧正は徳川家康公を祀る東照大権現社(後に東照宮)を日光に勧請。寛永2年(1625)には江戸に東叡山寛永寺を開創し,幕府のお膝元にふさわしく関東の天台宗寺院を充実させるとともに,日光山や東叡山を皇族が統括する門跡寺院とするべく奔走しました。その構想は天海大僧正没後の承応3年(1654)に日光山と東叡山の住職として後水尾天皇の第3皇子の守澄法親王を迎える事で実現します。守澄法親王は明暦元年(1655)には天台座主をも兼ね,翌明暦2年には輪王寺宮の称号を勅許されます。そして幕末の公現法親王に至るまで,13代12人の輪王寺宮が続くことになります。
冬の静かなひとときを,かつての宮様も楽しんだ庭園をながめつつ,いにしえの時に思いをはせていただければ幸甚です。
令和 2年12月 輪王寺宝物殿
【主な展示品】 ☆国宝 ◎重要文化財 ○栃木県指定文化財
☆大般涅槃経集解 第32巻 1巻 平安時代
◎鋳銅半肉千手観音像 1面 平安時代
◎東照大権現画像(霊夢像) 1幅 寛永20年(1643)
東照宮祭礼行列図 1巻 江戸時代
東照宮御縁起 第4巻 1巻 江戸時代
後水尾天皇親筆 玉襷和歌 1葉 慶安元年(1648)
薬師如来画像(御遠忌掛絵本尊)1幅 江戸時代
○朝鮮通信使奉 敔 1基 明暦元年(1655)
次回展示予告 2021年 2月11日(木)~ 4月7日(水)
日光山の風流と風雅