日光を守った勝海舟
2024年7月26日(金)から 9月 24日(火)
日光は美しい寺社の建造物が建ち並ぶ世界遺産として有名です。古代以来の日本屈指の霊場日光山を整備したのが、天海大僧正と徳川家光公です。元和3年(1617)年に家康公の帰依を受けた天海大僧正が家康公を東照大権現として勧請し、寛永13年(1636)に家光公が家康公二十一回忌に合わせて改築したことで、現在の荘厳な姿に大きく生まれ変わりました。日光の建造物は、江戸幕府の支援により発展し、維持されてきたのです。
明治維新後、日光山は江戸幕府の後ろ盾を失い、政府の神仏分離政策により二社一寺に分割されるだけでなく、三仏堂などの仏堂の廃止が検討されるようになります。このような状況から日光山の仏堂を守るために尽力したのが、当時の輪王寺門跡彦坂諶厚(ひこさかじんこう)大僧正でした。その活動を支えたのが、勝海舟をはじめとする旧幕臣や県内外の名望家たちです。彼らは、最後の輪王寺宮門跡だった北白川宮能久親王などの皇室周辺の人々からの協力を得ながら活動し、明治12年(1879)に日光山の堂舎や名勝の保護を目的に保晃会(ほこうかい)を設立します。なかでも勝海舟は「日光は将来きっと繁昌する」と述べて、日光に別荘を構えて積極的に保晃会に関わり、明治25年(1892)に保晃会之碑の撰文・揮毫をしています。
今回、明治初期に日光山の景観保護のために活動した人々ゆかりの宝物を展示しました。世界遺産「日光の社寺」の背後に隠された歴史を垣間見る機会となれば、幸いに存じます。
令和 6年7月
輪王寺宝物殿
【主な展示品】☆国宝 ◎重要文化財 ○栃木県指定
十三仏 勢至菩薩 1幅 江戸時代
勝海舟奉納三鈷(天海僧正消魔) 1点 明治15年(1882)
海舟御手製花瓶 1口 明治時代
○鉄造宝篋印塔 1基 元徳3年(1331)
◎鋳銅半肉千手観音像 1面 平安時代
☆大般涅槃経集解 巻56 1巻 平安時代
次回展示予告 2024年 9月26日(木)~ 11月26日(火)
探幽と二人の将軍(仮)
※2024年 9月26日(木)は休館です