2022年11月01日法話
『四苦』
教化部長 菅原 道信
仏教では、この世での苦しみを「四苦(しく)」と名付け、「生」「老」「病」「死」の四種に区分します。
老いること、病に罹ること、死ぬことは、確かに「苦」でありますが、意外に思われるかも知れませんが、生きることまで「苦」に分類されるのです。
我々の肉体は永遠ではないので、どんな丈夫な方も必ず「死」を迎えるのが、この世の理(ことわり)です。生命を授かった時から、いわば「死」へのカウントダウンは始まってしまいます。仁王様が具現される阿吽のごとく、人生始まりがあれば、必ず終わりが来るのです。
このように限りある「生」の中で、一筋の明かりを見いだすことが出来るならば、それこそ人生の醍醐味なのではないでしょうか。
伝教大師最澄上人はこれを「一隅を照らせ」と表現されました。
また、伝教大師は「人として生まれることは、大海に落とした針を探すより、高山に落とした糸を探すより難しいことなのだ」と「願文」で述べられています。
せっかく生まれてきたのですから、先徳の有難いお言葉を頼りに、人生を楽しんで生きてみたいものです。