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2020年06月25日法話

「機」の「根」を張ろう

輪王寺 財務部長

中里卓雄

 

毎年、当寺にも何名かの新人が就職しますね。皆さんも新人教育にはご苦労されて居られるかと存じます。うちの職場では覚えが早いよりも実直に、ゆっくりでいいから、云われたことを正確に毎日繰り返している人の方が、2年後3年後には確実に他の同期よりも成長します。

 

優秀じゃなくて良いんです。覚えが早い人は忘れるのも早いんですね。

 

仏教でも優秀な人の方が早く悟れる、というのは全然無いんです。ものを覚えることや知識を得ることだけが重要ではありません。

いくら知識があっても、それだけでは悟ることは出来ません。

 

そこでお釈迦様の逸話がありますので、今日はパンタカ兄弟の話をします。

 

チューラパンタカ(周梨槃特しゅりはんどく)は、兄であるマハーパンタカ(摩訶槃特まかはんどく)と共にお釈迦様の弟子になりましたが、聡明な兄に比べ愚かな弟は、3年たっても経典の一句すら覚えられませんでした。

 

修行の進まない弟に兄は怒って、お釈迦様の元を去って家に帰るよう告げました。

 

悲しみにうちひしがれるチューラパンタカを見られたお釈迦様は、そのわけを聞くと哀れんで、「本当に愚かな者は、自分が愚かであることを知らない。だが、おまえは自分が愚かであることを知っている。だからおまえは、自分の愚かさをおそれ悲しむことはない。」と言われました。

 

そしてチューラパンタカに一枚の布を渡すと「塵を払い、垢を除こう。」と繰り返しながら掃除をするよう勧められました。

 

お釈迦様の教えを受けたチューラパンタカは、教え通りただひたすらにこの句を唱えながら掃除に励みました。

 

 

そして掃除とは智恵の布で自分の心を磨く事であると気づき、ついに悟りを得ることが出来ました。

 

と言う訳で、ひたすら掃除をして悟りを得た仏様もいるのですね。

 

もしかしたら皆様の毎日繰り返す仕事の中にも悟りのヒントが隠されているかも知れませんよ。

 

周りの人よりも仕事の覚えが悪いからと云って、他人と比較して悲観したり落ち込んだりすることはありませんね。

 

 

 

※機根・・・仏の教えを聞いて修行しえる能力のこと。さらには衆生の各人の性格をいう。一般にいう根性は、この機根に由来する言葉。

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